トレドの街でトリックアート

“目の錯覚”あるいはだまし絵を意味する«Los trampantojos (ロス・トランパントッホス)»とは、あたかも実際に存在する物のように描かれた絵画のことで(日本で言うところのトリックアートですね)、興味深いことに、トレドの街中ではわりと簡単に見つけることができます。今日、スペインではこの言葉は、実際の食材とは異なる素材から作り出す遊び心のある調理法を意味するものとして広く知られていますが(例えば、実際にクルミを使うことなく、豆を潰してクルミの形を模倣した「豆のクルミサラダ」等)、トレドでは17世紀から、厨房ではなく、建物の外壁にこのだまし絵が使われるようになりました。

多くの建物のファサード、窓、ドア枠、バルコニーには、高貴な素材や装飾を模倣することによって高級感や建物の階級を感じさせるためにこうしただまし絵が施されてきました。つまり、大理石、彫刻、レリーフなどの高価な建築材や技術を使う代わりに、これらを模倣した壁画を施すことで、より経済的に建物に高いカテゴリーを与えていたわけです。

17世紀以降ヨーロッパ全土で流行したこの技法ですがトレドにも多くの例が見られます。このことを気に留めながらトレドの街を歩いてみると興味深い散策ができるはずです。本物とトリックアートを見極めながら歩いてみるのも、他の街ではできない楽しみとなることでしょう。